銅が殺菌する仕組み

含有量や純度が必ずしも効果には結びつかない理由

銅は、元素周期表上で近接している銀や金と同様に、多くの病原体や場合によっては微生物を殺菌することができます。銅が具体的にはどのように作用するかを理解するには、高校の化学の授業に立ち戻ると分かりやすいでしょう。

まだ記憶の片隅に留めているかも知れませんが、炭素、水素、酸素、窒素、リン、硫黄は、細胞やウィルスを含む、すべての生物の構成要素です。

銅は特定の状態の時に電子を放つので、ウィルス、菌類、バクテリアを高度に破壊することができる性質を持っています。

次の事項を念頭に置いてください:
* 細胞壁/細胞膜はリン脂質(P) である
* 酵素とたんぱく質はチオール(S) とアミン(N) から構成されている
* RNAとDNAは、リン酸塩(P)、チオール(S)、アミン(N)、カルボキシのグループ(CおよびO) から構成されている

そのため、銅イオンには以下の効果があります:
* 細胞膜の破壊
* 細胞膜を腐食する活性酸素種の生成
* 細胞内でDNAに結合された時に、その複製を防止
* RNAの分解 (ウィルス対策に有効)
* 細胞のエネルギー生成と呼吸を遮断

純粋な銅や銅を含む混合物は、温度、湿度、表面の露出など、さまざまな要素によって、異なった殺菌メカニズム効果を表します。 そのため、バクテリアやウィルスによっては、銅合金上で数時間に渡って生存し続けることがありますが、銅化合物を含む不織布上では数分内で殺菌されます。

抗菌性を持つことのできる銅化合物には、酸化銅、よう化第一銅、硫酸銅、炭酸銅、チオシアン酸銅を含んでいます。 一部は材木を扱うために使われたり、船舶に貝類が付着するのを防ぐためのコーティングに使われているほか、スキンクリームや創傷被覆材などでも使われています。 人体への接触に対する安全性は、調合によって異なります。

銅は優れた抗菌剤ではありますが、使用する形態や使用方法を選ぶ際には考慮すべき点が多くあります。 使用形態や使用時の環境 (温度や湿度など) をよく理解しておく必要があります。 物質に単に銅を加えるだけでは抗菌効果は得られないため、製品の開発プロセスにおいて試験が非常に重要となります。

真相追及 - 銅の実力

多くの人々が銀に抗菌効果があると認識していますが、銅と金にも同様の効果があると認識している人は少ないように思われます。 これら3つの金属は、「微量作用」と呼ばれる殺菌効果を共有している元素金属です。
これらの金属は、たんぱく質に対して共有結合的に接合するイオンを放ち、細胞が機能もしくは複製する能力を破壊します。

銅にはこの微量作用効果に加えて、病原菌に対して作用するメカニズムが他にもあります。 ベンゾインオキシムが活性添加剤で使われる場合など、一定の形式のときに、ウィルス、菌類、バクテリアを高度に破壊することのできる (活性酸素種を生成する) 電子を放射します。 銅の殺菌方式については、こちらでより詳しく説明しています。

さらに、銅は人体 (およびその他すべての生物) にとって不可欠な微量栄養素でありながら、抗菌性を備えた唯一の金属でもあります。 細胞呼吸、神経伝達物質の合成、肌内部でのコラーゲンとエラスチンのクロスリンクなどの際に不可欠です。 つまり、高濃度の際には有害になり得るものの、一般的に他の金属よりも問題を生じにくい性質を持っています。 EPA (米国環境保護局) によると、たとえば銀の有害性は銅の65倍にも及びます。

最後に、恐らくもっとも重要なことになりますが、銅は幅広い条件下で銀よりも効果的で、銀の効果が減少する条件下においても優れた効果を表します。 銀は高温多湿の環境では効果を発揮するものの、周囲温度の低下とともにその効果も下降します。 一方、銅は幅広い温度と湿度でその効果を維持します。

参考に、主要な相違点を要約した表を掲載しておきます。

特性
EPA Public Health Claims複数[i]なし
効能広範囲 (バクテリア、ウィルス、菌類、菌類胞子)ウィルス、菌類、菌類胞子に対しては低効果[ii]
作用モード金属イオン
活性酸素種
金属イオン[iii]
人体での役割不可欠な微量栄養素
肌の弾力性改善
傷の治癒促進[iv]
なし
耐久性低溶解性のため高い扱い方によるがあまり高くない
環境による効果
かなり高温の環境効果増進[v]効果減少
温度効果を維持低温時に効果減少
湿度効果を維持[vi]低湿度時に効果減少